最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)400号 判決 1949年7月26日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人小林右太郎、同中松潤之助、同平松勇の上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
辯護人小林右太郎上告趣意第二點について。
原判決の認定した事実によれば本件物件を金十五萬圓に見積り、被告人が買受けるキャラコ代金の内金の代りとして交付したというのであるから、原判決において適用した昭和二〇年一一月二〇日厚生省令第四四號第一條にいわゆる「販賣」に該當するものと解すべきである。論旨は被告人は深川雅司の詐欺にかかって本件物件を同人に交付したのであるから、キャラコ賣買代金の内金の代りとして本件物件を讓渡したことは無効であるから、右省令の販賣に當らないと主張するが、右省令の趣旨は鹽酸ヘロインの所有はもとより其一切の處分を禁止するにあるのであって、被告人の行爲が瑕疵あるものであるとしても本件の成否に關係なきものであるから、所論の點について審理を遂げないとしても、審理不盡とはいい得ない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって舊刑事訴訟法第四四六條により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)